住宅ローンの残債があるときの売却の注意点

2021.09.13

住宅を購入する時に大多数の方がお世話になるのが、住宅ローン。
昨今では超低金利や銀行の融資姿勢の緩和効果もあり、頭金を用意せずに「100%ローン」を使われる買主様も増えています。
そして、多くの方が返済期間を最長の35年で設定し、毎月の返済額の負担が過大にならないように、平準化をはかっています。

ところで、購入した時には先々に売却することを想定してかったとしても、様々な状況の変化に伴って、やむを得ず返済期間の途中で買い替えや売却を検討する方も、とても多いのが実情です。
この場合、住宅ローンをまだ完済できていないので、残債(未返済の元本)がある状態で売却することになります。
それ自体は特に問題ではないのですが、留意すべき点や、実際に対処しなければならないことについて、確認しておきましょう。

◆◆売却の大前提は抵当権を外すこと◆◆

住宅ローンの残債がある状態で売却する時の実務上のポイントは1点に集約されます。
それは、銀行が貴方の自宅不動産に設定している「抵当権」を、売却時に確実に解除することです。

購入してから時間が経っていると、あまり記憶にないかもしれませんが、住宅ローンを借りた時(自宅を購入した時)には、ローンの目的である不動産対して、必ず「抵当権」が登記されています。
抵当権とは、ローンの利用者(債務者)がもし返済を怠った場合に、銀行(債権者)が「競売」という強制執行を行うことによって、貸したお金を回収できる権利です。
抵当権は、不動産登記簿にその設定内容が登記されるので、売却する時には、買主側にもその情報が当然に伝わります。
仮に、この抵当権を外さないままの状態で売買をしたとすると、買主様は突然とんでもないトラブルに巻き込まれる可能性があります。
つまり、買主が関与していないところで売主が滞納してしまうと、購入した自宅が銀行によって競売に掛けられるという恐ろしいことに。
従って、抵当権が有効なままの状態で不動産を売買することは、常識的にはあり得ません。

銀行が抵当権の解除を了解するためには、住宅ローンの残債の全額を完済する必要があります。
貸しているローンの元本がゼロになれば、銀行としては、抵当権を付けておく理由がなくなるからです。

◆◆残債と売却価格の関係をチェック◆◆

では、住宅ローンの残債を完済するための原資は、どのように用意すればよいのでしょうか?
一般的なケースでは、不動産を売却することで売却代金を受領することになるので、それをローンの返済に充当することになります。
売買と抵当権を外す順番を、厳密に言えば、

①売買代金を受領
②残債を一括返済
③金融機関が抵当権の解除に同意(必要書類を交付)
   
となるので、売買した時点では、実は抵当権はまだ存続しています。
ただ、これらを司法書士さんの職責で同日中に処理することで、売買の実務では「売却した時点で抵当権が外れた」ものと見做します。

ただし、ここで問題になるのは、
 住宅ローンの残債 > 売却代金-売却諸経費
という状態の場合。
これでは売却代金の全額を返済に充当しても、まだ残債一部が残ってしまうので、抵当権を解除することができません。
従って、このような状況の時には、不足する分を預金などの自己資金から追加して充当する必要があります。
不足額が軽微な金額なら対応可能だと思いますが、大幅に足らずに、自己資金ではとても間に合わない状況だとすると、売却する際の大きな障害になります。
買い替えなどの場合では、購入する物件の購入代金に不足額を加算して新たに住宅ローンを組むこともできない訳ではありませんが、審査基準が厳しいことや、毎月の返済額も大きくなってしまうことを、よく理解しておかなければなりません。

いずれにせよ、もし自宅の売却を検討するなら、価格査定や売却に必要な諸経費の計算を、一度不動産会社に依頼してみましょう。
住宅ローンの残債の返済に支障がないかたちでの売却が可能か、早い段階で念のために確認しておけば、安心材料になります。
なお、売却に必要な諸経費とは、不動産会社に支払う仲介手数料や、売買契約書に貼付する印紙代、引越し代などを指します。
登記された抵当権を解除するために、司法書士さんに委託料も支払いますが、この費用は2~3万円程度です。

◆◆不動産相場の変動にご注意◆◆

住宅ローンの残債は、毎月の返済に従って減っていきます。
最近では低金利の効果で、元本の減るスピードが割と早いので、購入した自宅不動産の価格相場が著しく下がっていなければ、残債の返済に深刻な支障が生じる懸念は比較的小さいと言えます。

ただ、今後もずっと安泰とは断言できません。
景気の好況・不況と同様に、不動産の価格相場にも変動の波があり、今後もそれは繰り返されるでしょう。
一般的に、好況の時に購入した住宅は高額の場合が多く、その後不況になると価格が下がってしまい、購入時より相当に安い価格しか付かないことがあります。
平成前半のバブル経済崩壊後は、まさにこの状態で、資産デフレの悪影響が甚大な暗黒の時代でした。
売却しようとしても多額の住宅ローンが残ってしまうため、やむを得ず従来の家に住み続けているという方が、世の中にたくさんいらしたものです。

将来のことは分かりませんが、もし売却する場合の不安要素を潰しておきたいと思うなら、一番のお勧めは、地道な繰上げ返済です。
銀行によって若干異なるものの、少額の繰上げ返済を無料で対応しているなら、資金に余裕がある時にまめに返済に充てることで、元本をハイスピードで減らすことができます。
繰上げ返済には、売却をしない場合でも、利息を削減して銀行への支払総額を少なくできるメリットもあります。

今すぐ無料査定・無料相談