不動産仲介の闇② 両手仲介狙いとは?

2022.01.22

不動産仲介の闇① 物件の囲い込み営業とは? でも触れましたが、売却を依頼する不動産会社を選ぶ時には、その会社の営業姿勢や体質をよく見極めないと、売主様より自社の利益のために取引を進められてしまう懸念があります。
不動産会社がえげつなく利益を追求する問題で、しばしば使われるキーワードが「両手仲介」という取引。
このコラムでは、業界の悪しき慣習と言える両手仲介があの手この手で狙われている実態を深堀りして解説します。

◆◆両手仲介とは何か?◆◆

マンションなどの不動産売買を仲介で承ると、不動産会社では「仲介手数料」を成功報酬のようなかたちでお客様から受領します。
この仲介料については、金額の上限等が法律で制限されていますが、売主様と買主様の双方から頂戴することが可能です。

売却を進める健全なかたちとしては、

1.A不動産会社が売主様から売却のご依頼を承る。

2.A不動産会社はその物件の情報を業界内に広く公開して、買主様の紹介を募る。

3.B不動産会社に購入を検討したいというお客様がいらしたので紹介する。

4.条件などの合意ができたら、A不動産会社の売主様とB不動産会社の買主様の間で売買を行う。

5.仲介手数料は、売主様はA不動産会社に、買主様はB不動産会社にそれぞれ支払う。

という流れであり、売主様と買主様の双方から仲介手数料を頂戴できる仕組みの目的は、売却物件の情報を幅広く開示させて売買の成立を促進ることに他なりません。
ところが、この仕組みを逆手に取って、売却を依頼された物件の買主を是が非でも自社で獲得し、両方から頂戴する仲介手数料を独占する行為が常態化しています。
このように同業他社を排除して、ダブルで仲介料を取りに行く営業を「両手仲介」と呼びます。

◆◆両手仲介を狙った営業行為の例◆◆

売買仲介を扱っている不動産会社にとって、仲介手数料は主要な収入源であることは間違いありません。
従って、1つの取引で得られる売上が2倍になる両手仲介は大変魅力的ですが、それを売主様のデメリット(希望価格での売却を阻害)と引き換えに狙うことは、まさに本末転倒でしょう。
もちろん売主様にしても、明らかな背信行為があれば黙っていないでしょうから、このような行為は表に出さずに上手にカモフラージュして行われています。
手口の一例をご紹介します。

〇一般媒介契約での仲介を勧めてくる

不動産会社に仲介を依頼する場合には、不動産会社と「媒介契約」という仲介業務の内容を定めた契約書を取り交わすことになります。
媒介契約は法律で3種類が定められているのですが、そのうち「一般媒介契約」だけは、売却物件の情報を同業他社に公開する義務がありません。
本来なら、3種類の媒介契約の違い(メリット・デメリット)をまずはニュートラルに説明するべきですが、他社から買主を紹介されないようにするために、何ら説明することなく一般媒介契約が提示される場合があります。

〇他社からの紹介を暗に断る

物件情報が開示されると、購入希望のお客様情報を持っている他の不動産会社から、買主を紹介したい旨の打診が入ります。
その回答として「先にご検討中のお客様がいます」とか「契約予定になりました」と嘘を言って断ることも、日常的に行われているようです。
買主様を紹介したい側には、営業の進捗状況を確認する術はないので、このように回答されると「それは嘘ですよね」とは言えません。

〇売主様への虚偽の報告

媒介契約をご締結いただくと、定期的な営業報告が義務付けられる場合があります。
その際に、上記のように、他社から購入希望の打診があったが自社の都合で断ったとは言えませんから、嘘の報告書が出来上がります。
「現在購入検討中のお客様が当社にいます」くらいの創作をしても、あくまで検討中であれば、売主様にも調べようがありません。

〇購入申込を受け取っても‥

他社の購入希望のお客様から買付証明書(購入の申込書)を受け取ったしても、自社にも検討していたお客様がいれば大急ぎで煽って、後付けで買付を取得する行為も見られます。
購入希望額が後者の方が高ければ、売主様にとってはデメリットではありませんが、他社紹介のお客様の方が購入希望額が高いのに、色々と難癖を付けて自社の買主様を選ぶように誘導することがあります。
例えば、他社紹介のお客様の属性(職業や年齢)を問題視したり、住宅ローンの審査が厳しいかもしれないと誇大に説明して、自社のお客様の方が安心だと言われると、深く事情が分からない売主様なら、勧められるままに了解してしまうかもしれません。

◆◆両手仲介狙いがなくならない理由◆◆

上記の事例はいずれも売主様軽視の酷い話で、不動産業界のモラルが問われても当然だと思います。
一方で、このような闇がなくならないのは、日本では法律で両手仲介が禁止されていないことが大きな理由です。
確かに、自社にマンション購入を検討しているお客様がいて、そこに条件に合致した売却のご依頼をいただいたら、結果的に両手仲介になることはあります。
ただ、このような偶然は滅多にあるものではなく、アメリカなど諸外国では両手仲介の弊害と消費者保護の観点から、法律で全面的に禁止されているのが実情です。

また、深刻なのは、両手仲介狙いを積極的にしている不動産会社が、中小の無名の会社よりも、有名大手に顕著に見られることです。
もちろん全部が全部ということではなく、担当者毎に考え方やスタンスが異なりますが、売上予算や目標の達成が優先されている背景があることは、容易に推察できます。
マンション売却の依頼先の不動産会社を選択される際には、売主様から営業担当者に対して「両手仲介」という言葉を出すだけでも、相手にとっては大きなプレッシャーとなり抑止効果が期待できますので、試してみてはいかがでしょうか。

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