買取りを強く勧めてくる不動産会社の狙いとは?

2021.07.22

日頃の生活で「貴方の〇〇を高く買取ります!」という宣伝をよく見聞きしますね。
対象になるモノは中古車や貴金属、衣料品、古本、ゲームソフトなど多岐に渡りますが、マンション等についても、不動産会社による「買取りサービス」を利用して現金化することができます。

一方、不動産の売却で最も多く利用されている手段は「仲介」で、売却を承った不動産会社は一般の市場で購入希望客を広く募集して、売買の成立に努めます。
この2つの売却手段は、似たところもありますが、本質的にまったく異なるものと言えます。
それぞれにメリットとデメリットがあり、売主様が優先して実現したいことに応じた使い分けが大切なのですが、残念ながら、中には買取りばかりを強く勧めてくる不動産会社もあるようです。
彼らの狙い(ビジネスモデル)は何なのか、見て行きましょう。

◆◆買取業者の事業とは?◆◆

古本屋に代表されるように、不用品を買い取って別の人に売るという商売は、大昔からある、分りやすいビジネスモデルです。
昨今の買取業者さんは、買取った物を右から左へそのまま再販するだけでなく、徹底的な整備やリメイクを施して「商品化」したり、熱心な一部の愛好家に希少価値を訴求できるように工夫して、上手に商売をされていると思います。
ただ、やっていることの根本が変わった訳ではなく、買取り業を別の言葉で表せば「転売業」です。

転売業において、買取りは仕入れに相当するため、事業者にとっては、安く買取れるほど利益が出る構造になっています。
従って「高く買います」という宣伝に関わらず、本心から高く買取りたいと思っている事業者は、理屈上は存在しません。
同業者との仕入れ競争に勝つためや、提示価格が安すぎると売ってもらえないので、このように表現していると言えるでしょう。
事業者として利益確保をはかりつつも、売主様にも納得いただける水準の価格を提示することは、買取業を持続するために必須です。
実は、このような買取りのビジネスモデルは、対象がマンションなどの不動産の場合でも、まったく同じ事情が当てはまります。

◆◆仲介と買取りの決定的な違い>

不動産の売却で、最も多く利用されている手段は「仲介」です。
一方で、古本や中古車の処分に際して、専門業者が仲介という立場で買主を探すケースはまずないので、これは不動産に特有の売却手段と言えるかもしれません。

不動産の売却で、仲介が多用されている理由は2つ考えられます。
1つは、不動産会社の事情として、すべての不動産取引を古本のように買取りで行うとすると、尋常ではない買取り資金が必要になり、非現実的であること。
また、もう1つはもっと重要な理由で、売主様のメリットとして、仲介を使えば、市場相場に準じた価格での売却が可能なことです。

後者については、仲介と買取りとでは、売却の仕組みが異なるため、実際の売却価格にも大きな差異があります。
まず仲介では、買主を一般の市場で募るため、購入の需要がある物件なら、価格は相場並みか、それ以上も期待できます。
ところが、買取りの場合は、不動産会社は転売して差益を得ることが基本なので、相場水準で買取っていたら利益が出ません。
転売時の価格を相場並みと想定して、そこから経費や利益を引いた価格を買取り希望額とするので、概ね相場水準の70~80%程度になってしまうと言われています。(物件によって異なります。)

因みに、買取り額が相場の70~80%ということだけを聞くと、不動産会社がいかにも暴利を得ているように感じるかもしれません。
ただ、買取った物件が予定通りに転売できる保証はないうえ、ほとんどの不動産会社は買取り資金を銀行から借りているなど、意外と多額の経費が掛かるのは事実です。
100円で買い取ってもらった古本が、翌日に300円で書棚に並んでいても、けしからんと思う方は少ないと思います。
不動産事業についても内情をご理解いただけると幸いです。

◆◆メリットとデメリットの比較>

仲介と買取りにを比較すると、売却価格は仲介の方が有利ですが、それ以外にも特徴的なメリットとデメリットがあります。

売却のスピード
 仲介 市場で買主を探すので、比較的長い期間を要する。
 買取 購入者が特定の買取業者自身なので短期間での売却が可能。

価格の確定
 仲介 営業状況によって流動的で、売買契約を締結するまで不確定。
 買取 買取業者の提示価格を売主様が了解すれば、即決できる。

仲介手数料の負担
 仲介 成約時には、不動産会社に仲介手数料の支払いが必要。
 買取 買取業者との直接取引なので、仲介手数料は発生しない。

売却後の保証
 仲介 もし不具合等が見つかったら、一定の範囲内で修理が必要。
 買取 不具合が見つかっても保証や修理を請求されることはない。

このように列記すると、買取りのメリットも割と大きそうに見えますが、通常は最優先されるべき「高く売る」という仲介のメリットを十分に踏まえて、判断すると良いと思います。

◆◆買取りを強く勧められたら>

売主様の立場で振舞える不動産会社なら、最初に仲介と買取りの違いをご説明して、お客様のご事情に合った手法をお勧めするのが、当然の仕事の進め方です。
前述の通り、それぞれの手段には特徴があるので、一概にどちらが優れているのでお勧めする、という比較ではありません。

ところが、中には「買取りのメリット」と「仲介のデメリット」ばかりを強調して、買取りを強く勧めてくる不動差会社もいます。
実際に「仲介では売れないと言われた」という、お客様からのお話も聞いたことがあります。

売主様を買取りに誘導したい不動差会社の狙いは明らかで、その物件を後日転売することで、多額の利益を得られる目算が立っているからに他なりません。
もし仲介を頭から否定するような営業トークを聞かされたら、不動産会社にとって、そのマンション等を買取ることに大きなメリットがあるものと思って、間違いないです。
逆に売主様にとっては、思ったよりも市場で高額で売れる可能性が高い物件であると容易に認識できる状態なので、むしろ必ず仲介を選択してください。

手間要らずで簡単だなどと甘言に乗せられて、安易に買取りを了解してしまうと、大損する懸念があります。
もし、納得できない営業に違和感や疑念を感じた時には、他の不動産会社に相談して、客観的な立場からの意見を聞いてみるのも、騙されないための有効な対策です。
複数の不動産会社と話をしてみることは、各社の提案の裏付けや整合性を確認することにも役立ちます。

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