相続する不動産を売却したい時のポイントとは?

2021.08.26

不幸にして、親御様や配偶者様に相続が起きたときのことについて、漠然とした、或いはかなり具体的なお悩みや不安を持っている方は大変多いものと推察します。
相続手続きの全般については、不動産の話に限る訳ではないので、税理士さんや司法書士さん、または弁護士さんの守備範囲になります。

そのいずれでもない不動産業の従事者の私からは、相続に伴って、遺産(相続財産)である自宅不動産を売却して換金する必要があるケースを想定し、ポイントを解説することにします。
どのような状態になったら売却できるのか確認したくても、ご本人の生前に相続の話を切出すのは難しいと思いますので、参考にしていただければ幸いです。

◆◆法律で定められた相続の制度◆◆

財産を残してお亡くなりになった方を「被相続人」と言います。
被相続人に多額の財産がある場合は別にして、ごく一般的な家庭の場合は、被相続人が用意周到に「遺言状」を残してくれるケースはまだまだ少ないのが実情。
相続の話は、故人の葬儀が終わった頃に、親族の間でそろりと始めるというパターンがほとんどだと思います。
この親族会議で注意したいのは、参加する方の中に、相続の制度に明るく、中立的かつ冷静に話をリードできる人がいればラッキーですが、そんな好都合な方は滅多にいるものではありません。
法律等を踏まえて粛々と話ができそうにないようなら、感情論が先行して険悪な状況になる前に、一旦止めた方がいいかもしれないです。

相続制度は非常に複雑で、詳細を専門家ではない方が勉強するのは無理があります。
ただ、もし貴方が相続の親族会議に参加する可能性があり、同時に争いを避けたいと思うなら、次の項目だけを頭の片隅に入れておいてください。

①被相続人が遺言状を残していない場合は、民法などの法律が定めている「法定相続」に基づいて遺産を分けるのが大原則。

②法定相続人は、配偶者と子供以外に、親族の状況によっては親・兄弟姉妹が含まれるほか、子供には、例えば前の配偶者との間の子や、子が先に亡くなっていれば孫まで含まれる。法定相続人の全員を確定させることが、最初の重要なポイント。

③遺言状がある場合でも、法定相続人には「遺留分」という、一定の割合の相続が必ず認められる。

④すべての相続人の間で相続内容(誰が何を相続するのか)を合意できたら「遺産分割協議書」という書面を作り、対象者全員が印鑑証明書を付けて実印を捺印する。相続放棄をした人の押印も必要になることに、特に注意する。

⑤相続税の課税対象になる場合(控除枠を超える遺産があった場合)は、原則として、被相続人の逝去から「10ヶ月以内」に申告及び納税をしなければならない。

繰り返しますが、各項目の詳細までを把握するのは困難ですが、この5つの概要を押さえておけば、話がとんでもない方向に行ってしまうことは、まず避けられると思います。

実際には、誰が何を相続するのかや個別事情を巡って、意見が対立する可能性は高いのですが、実は相続には完了まで「10ヶ月以内」というタイトな期限があることを知っていれば、長く対立すると全員が不利益を被ってしまうことも、ご理解いただけるでしょう。
調査や書類作成を税理士さんなどに依頼する際にも、依頼者である相続人が制度の概要を分かっている場合と、滅茶苦茶な個人的な主張をしている状態とでは、当然、話の進め方がまるで異なります。

◆◆不動産の売却に必要なこと◆◆

さて、被相続人が残した不動産を売却したいという理由はいくつも想像できますが、その物件が横浜市内の自宅不動産だった場合は、次の3つのケースが多いように感じます。

①被相続人の死後、その自宅に住む人がいなくなり、賃貸運用するつもりもない。
②法定相続人が複数人いるが、遺産がほぼ自宅だけのため、換金しないと分けられない。
③被相続人に借入金などの「負の遺産」もあるため、売却して返済する必要がある。

従って、状況によっては、売却を急ぎたいという強いご要望をお聞きすることもありますが、どのような事情があったとしても、被相続人の自宅不動産を特定の親族の一存で、売却することは不可能。
売却できる状態にするためには、次の2つの手続きを欠くことができません。

まず、前述の「遺産分割協議書」を作成し、全員が実印を押す。
次に、その協議書を法務局に提出し、不動産登記簿に記載されている所有者(故人)を、正規の相続人に変更する。

逆に言えば、登記簿の所有者の名義が被相続人のままでは、不動産の売却は絶対にできないので、その変更のためには遺産分割協議書が必要であり、その作成のためには法定相続人全員が相続内容を合意しなればならない・・と遡れます。
不動産会社として、相続不動産の売却活動を正式に始められるのは、所有者の名義変更ができる状況になってから。
それ以前には、いくら早期売却の必要性をご説明いただいたとしても、仮定のお話しと準備までしか、進めることができません。

◆◆相続内容を決める時のポイント◆◆

相続に関する不動産会社からのアドバイスとしては、まず、法定相続人の全員が自宅不動産の売却を了解しているなら、「遺産分割協議書」にはその不動産の相続割合(持分)を定めていただくことです。
特定の1人が不動産を相続して、他の相続人には売却後に所定額を支払うという処理も可能ですが、見込みよりも高く(逆に安く)売れた場合に、新たな問題を生んでしまう可能性があります。
その点、共有なら、ご自宅を高く売却できれば相続人全員にメリットがあるので、損得の計算につながりません。

他方、もし自宅不動産以外にも多数の遺産があったり、引き続きそこにお住まいになる方がいる場合は、特定の方が相続することになる可能性が高いと思います。
この場合、経済的に合理的かに関わらず、相続人は、当面の間は不動産を売却せずに、継続保有していた方が賢明な行動と言えるでしょう。
(登記簿の所有者の変更は、売却しない場合でも行ってください。)

不動産会社としては、特定の相続人だけに有利に取り計らうことは憚られますが、相続に伴う自宅不動産等の売却が滞りなく運ぶように、ご相談に対応させていただくことは可能です。
相談先を選ぶ際には、税理士さんや司法書士さんと連携している不動産会社だと、後日の安心材料にもつながります。

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